タイトル:「【インボイス】令和5年度改正 1万円未満の値引き等に緩和措置」

売手負担の振込手数料は返還インボイス交付不要

 令和5年度改正 1万円未満の値引き等に緩和措置

 取引先(買手)の都合で差し引かれた振込手数料相当額の売手の処理方法は、主に「売上値引き」「支払手数料」の2つのパターンがある。

インボイス制度開始後に「売上値引き」として処理する場合、現行法では売手に“返還インボイス”の交付義務が課されるが、令和5年度税制改正で義務が免除される予定だ。

 

「値引き」処理での新たな事務負担解消

 インボイス制度では、売手と買手の税率と税額の一致を図るために、値引き等を行った際に値引き等の金額や消費税額等を記載した書類(返還インボイス)の交付義務を課している(新消法57の4③)。

 

 令和5年度税制改正大綱では、事業者の事務負担を軽減する観点から、少額な値引き等(税込価額1万円未満)について返還インボイスの交付義務を免除する措置が盛り込まれた。恒久的な措置で、全ての事業者が対象になる。

 

 実務では、簡易課税制度を適用している事業者を中心に、買手から差し引かれた振込手数料相当額を「売上値引き」として処理しているケースが多い。

改正により、多くの実務家が懸念していた新たな事務負担の問題が解消されることになる。

 

  また、小売業等が税込価額1万円未満の商品について返品を受けた場合も返還インボイスの交付は不要となる。

 

「支払手数料」処理は改正なし

 他方で、買手に振込手数料を立替払いしてもらったと認識し「支払手数料(課税仕入れ)」と処理する場合についての改正はない見込みだ。

 

 インボイス制度開始後は、買手から立替払いの事実を証する書類の交付を受ける必要があるため、原則は、買手が金融機関から受け取った「振込手数料に係るインボイス」と「買手が作成した立替金精算書」を合わせて保存することで仕入税額控除が認められる。

 

 ただ、買手がATMを利用して振込みを行った場合は帳簿のみの保存で仕入税額控除が可能となるため、ATMの手数料について売手が仕入税額控除を行う場合には、立替金精算書の保存が不要となる。売手は「買手が差し引いた金額が振込手数料であること」及び「立替での支払がATMでの振込みによるもの」を確認したうえで「帳簿のみ保存の特例」の適用を受けることになる。

 

 

【参考】令和5年10月以降の売手負担の振込手数料(税込価額1万円未満)に係る取扱い(イメージ)

 

 

編集者:ノノセ

(引用元:「週間税務通信 令和5年1月16日号」p6

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