タイトル:「定額減税 年調一括対応は労基法上の問題も」

税法上の罰則はないが労基法上は罰金規定

 企業等の源泉徴収義務者は、令和6年6月1日以後に従業員等に支払う給与等の源泉徴収税額から定額減税額を控除する月次減税を行う必要がある。

 月次減税の対象となる同日時点に在職する「基準日在職者」に月次減税を実施せず、年末調整に減税対応を先送りすることは認められていない。

 

 4月26日の衆議院財務金融委員会では、月次減税を行わずに年末調整で一括して減税対応をすることについて、

 労働基準法に抵触する恐れがあり、同法に罰金も規定されていることが示された。

 林芳正内閣官房長官は5月29日の記者会見で

 「企業に労働基準法違反が認められた場合、労働基準監督機関はまず是正指導を行い、企業による自主的改善を図ることになり、直ちに罰則が適用されるものではない」などと話している。

 

国会で年調一括対応の問題点を質問

 企業が6月の源泉徴収で月次減税を行わず年末調整まで減税を先送りする対応について、

 国会では、櫻井周衆議院議員(立憲民主党・無所属)から「税法上の罰則はあるのか」、「労働基準法上の罰則はあるのか」という趣旨の質問があった(令和6年4月26日・衆議院財務金融委員会)。

 

国税庁と厚労省が答弁

 櫻井議員の質問に対して、国税庁の星屋和彦次長は「源泉徴収義務者が6月の定額減税を実施せず、年末調整に先送りした場合について、

 税法上の罰則は設けられていないが、法令に従い適切に定額減税に係る事務を実施いただく必要があると考えている」などと答弁した。

 

 厚生労働省の増田嗣郎大臣官房審議官は「労働基準法第24条第1項において、賃金は、通貨で、直接労働者にその全額を支払わなければならないとされ、その例外として、『法令に別段の定め がある場合』には、賃金の一部を控除して支払うことができるとされている。この『法令に別段の定めがある場合』には、所得税の源泉徴収などが該当するが、税法に基づき、6月の給与での 源泉徴収から、定額減税をしなければならないとされている労働者に関して、これを先送りして年末調整で定額減税をすることは、6月の賃金から、税法に定められた本来の源泉徴収額より過大な税額を控除することになると考えられる。こうした過大な税額の控除については、労働基準法第24条第1項の例外の要件である、『法令に別段の定めがある場合』に該当すると評価することはできないことから、同条違反になるものと考えられる。労働基準法第24条第1項違反の罰則については、同法第120条により、30万円以下の罰金と定められている」などと答えた(【参考】)。

 

【参考】労働基準法第24条第1項(一部抜粋)

賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、…法令に別段の定めがある場合…賃金の一部を控除して支払うことができる。

 

 

 

編集者:ノノセ

(引用元:「週間税務通信 令和6年6月3日号」p11

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