令和2年度税制改正により本年10月1日以後の課税仕入れから、賃貸マンション等の「居住用賃貸建物」に係る消費税の仕入額控除の適用が制限されます。
9月までに建物の売買契約を締結し、契約の締結日に課税仕入れを計上することで、従来通り仕入税額控除を適用しようとしても、建物の引渡しが10月以後だと仕入額控除の適用が制限される恐れもあります。
10月1日をまたぐ契約・引渡しに留意
建物を固定資産として売買する契約では、引渡し時ではなく、契約の締結日を課税仕入れの計上時期とすることが認められています。
次のような場合認められるようです。
〇売買代金全額の支払いと所有権移転登記及び不動産の引渡しは同時履行とする
〇不動産の売主と賃借人との間で賃貸借契約が締結されており、買主は不動産の所有権移転と同時にその賃貸借契約に関わる一切の地位を承継する
〇不動産から生じる賃料等の収益等は不動産の引渡し日以降に買主に帰属する
〇売主は不動産の引渡しと同時に賃貸借契約や鍵、書類一式を買主に引き渡す
しかし、契約の締結日の時点で、その売買に係る権利債務が確定したという実態がない場合、納税者が恣意的に、契約の締結日をもって課税仕入れを計上することは認められないようです。
例として、金地金(金塊)の売買を利用し、居住用賃貸建物の課税仕入れの計上時期を売買契約の締結日とすることで、多額の消費税の還付を受けようとしましたが、建物の引渡し時が課税仕入れの計上時期として否認され、その後の裁判などでも納税者が負けてしまいました。
この課税仕入れの計上時期の考え方は、居住用賃貸建物の仕入税額控除の制限の場面でも同様のようです。このため、実態によっては、9月までの売買契約の締結日に課税仕入れを計上することが認められず、引渡しが生じた10月以後の課税仕入れとして、仕入税額控除を適用できないことがあるようです。
要するに「実態」です。売主と買主がお互いに債権債務を契約日(9月中)に履行できていてれば、課税仕入の計上はできるはずです。とても難しい内容で筆者自身、苦戦していますが、制度を理解してコロナに負けず一緒にがんばりましょう。
編集者:オオタ
引用元:「税務通信 NO.3620」R2.9/7 P3