月次減税事務開始まで残り1か月となりました!
同一生計配偶者と扶養親族の把握を3ステップで確認しましょう。
給与所得者の定額減税に係る月次減税事務の開始が約1か月後に迫り、
給与担当者は、実施前までの準備や、従業員等への周知に追われる頃でしょう。
特に、月次減税の対象となる基準日在職者と、月次減税額の加算対象となる同一生計配偶者と扶養親族の把握については正確な理解が求められます。
今回のコラムでは、月次減税対象者の判定についてフローチャート形式で紹介していきます。
令和6年分所得税の定額減税は、納税者(令和6年分の合計所得金額1,805万円以下)とその同一生計配偶者及び扶養親族1人につき、3万円が控除されます。
月次減税事務とは、令和6年6月以後の各月の給与等(賞与等含む)に係る定額減税前の源泉徴収税額から月次減税額の控除を行う事務のことです。
6月1日現在、勤務中で、源泉徴収税額表の甲欄が適用される居住者である「基準日在職者」が対象となります(【ステップ1】)。
5月31日までに退職した者や、5月31日までに出国して非居住者となった者、6月1日時点に在職中だが乙欄・丙欄が適用される者などは、基準日在職者に該当しません。
合計所得金額が1,805万円超の場合、定額減税の対象外となりますが、基準日在職者の該当性を判定する際は、合計所得金額を考慮する必要はありません。
合計所得金額1,805万円超と見込まれる者であっても、基準日在職者に該当すれば月次減税事務を行います。
最終的に合計所得金額が1,805万円超となった者については、月次減税事務で控除された本来受けられないはずの減税額を、
年末調整又は確定申告で精算することになります(国税庁「令和6年分所得税の定額減税Q&A」問2-2、 №3791 等)。
6月以後最初に支払う給与等から控除する月次減税額は、基準日在職者の同一生計配偶者と扶養親族の人数によって変動し、1人当たり3万円が加算されます。
基準日在職者に配偶者がいる場合、加算対象となる同一生計配偶者に該当するか否かを確認していきます(【ステップ2】)。
ポイントとなるのが、“扶養控除等申告書における配偶者の記載の有無”と、“配偶者の合計所得金額の見積額と居住者該当性”の2点です。
まず、給与担当者は、加算対象となる同一生計配偶者を把握するために、基準日在職者から提出済みの扶養控除等申告書(A欄)を確認しましょう。
扶養控除等申告書に配偶者の記載がされるのは、基準日在職者の合計所得金額が900万円以下として「源泉控除対象配偶者」に該当する場合に限られます。
「源泉控除対象配偶者」に該当して扶養控除等申告書に記載がある場合でも、全員が同一生計配偶者に該当するわけではなく、
合計所得金額(令和6年中の所得の見積額の欄)が48万円以下であること、
居住者に該当することの両方を満たす配偶者のみが、同一生計配偶者として加算対象となります。
合計所得金額が48万円超95万円以下の者も記載されるため、これらの配偶者を加算対象と認識しないよう注意が必要です( №3793 )。
これに対して、基準日在職者の合計所得金額が900万円超の場合、「源泉控除対象配偶者」に該当しないため、扶養控除等申告書に配偶者の記載がないことになります。
この場合、基準日在職者から「令和6年分源泉徴収に係る定額減税のための申告書」(以下、源泉徴収に係る申告書)の提出を月次減税事務開始前までに受けることで、
そこに記載されている同一生計配偶者を加算対象とすることができます。
一方、基準日在職者に扶養親族(合計所得金額48万円以下)がいる場合、基本的に扶養控除等申告書で把握できます(【ステップ3】)。
扶養控除等申告書には、合計所得金額48万円以下の親族について記載されています。
また、加算対象となる扶養親族については、居住者に該当していればよく、年齢制限はありません。
したがって、16歳以上については同申告書の“B欄”に、16歳未満については同申告書の“住民税に関する事項の16歳未満の扶養親族欄”に記載された者のうち、居住者に該当する者を加算対象とすれば大丈夫です。
仮に、扶養控除等申告書に扶養親族の記載がないイレギュラーケースの場合、基準日在職者から扶養親族の氏名等が記載された源泉徴収に係る申告書の提出を受けることができます(同Q&A6-10)。
提出を受けた場合は、そこに記載されている扶養親族を加算対象とします。
以上の3ステップを経て把握された①~③の合計額が、基準日在職者に係る月次減税額となります。
引用元:税務通信3800号
編集者:ムラセ