このコラムでのポイント! |
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・テレワークのための備品を「支給」すると給料として課税扱いとなるが、「貸与」すると課税されない! |
・「貸与」する場合は、「貸与」であることが明確にわかるように会社側で一定の管理を行わなければならない! |
今年はコロナウイルスという未曾有の事態が発生し、生活様式が大きく変わった一年でした(まだ10月ですが)。
変化した生活様式の中のひとつとして「テレワーク」があります。首都圏を中心に、自宅でもオフィスと同様の環境で仕事ができるよう、従業員一人一人にPCや机などを調達する会社も多かったのではないでしょうか。
しかし、このようなテレワークのための備品も、会社から従業員への「支給」となると、「現物給与」として、給料と同じ扱いになり、従業員に所得税が発生してしまいます。所得税法上、給与所得を有する者がその使用者から受ける金銭以外の物(経済的な利益を含む)でその職務の性質上欠くことのできないものとして政令で定めるものは非課税所得とされています(所法9①六、所令21)。
すなわち、仕事に必要なものだと政令で定められたものには所得税はかからないということです。しかし、この「仕事に必要なもの」と政令で定められているものは限定的で、PCや机といった、テレワークのために必要となってくる備品は対象となっていません。なので、こうした在宅勤務を行うために必要な備品を「支給」した場合には、コピー用紙など少額な消耗品を除いて、原則、現物給与として課税の対象となってしまいます。
ここで「支給」を強調したのは、「支給」でなければ、従業員に所得税はかからないからです。「支給」ではない方法、すなわち「貸与」です。
在宅勤務を行うために必要な物品を「支給」ではなく「貸与」した場合には、その物品は会社の資産となるため、基本的には、現物給与として課税されることはありません。その上、会社の資産になるということは、原則課税の事業者であれば、資産にかかっている消費税が戻ってきますし、経費(減価償却)も発生します。
ただし、「支給」なのか「貸与」なのか判然としない場合、税務調査で指摘されるリスクもあるので、会社側で台帳を作って管理するなど、業務で使用するために会社が従業員に「貸与」していることを明らかにしておかなければなりません。
ところで、最終的に会社からの「貸与」とする場合であっても、必要な物品を会社が購入して従業員宅に送付するのは手間がかかるため、従業員が自分で購入し、後で実費精算するケースも多いようです。
この場合、単に会社が購入すべきもの従業員が立て替えたにすぎないため、「貸与」として、給与課税は生じません。
一方で、例えば「在宅勤務を行う環境を整えるため」などとして、会社が一定額を支給するケースもあるようですが、こうした事後精算を行わない「渡し切り」支給の場合には、「支給」と同様、給与課税が生じるので注意してくださいね。
編集者:ムラカミ
(引用元:「週間税務通信 令和2年10月12日号」p2~p3)